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数日後、バイトを終えて家に帰ると僕の兄のお嫁さんの爽世さんが出迎えてくれた。何やら彼女はテンション高めだった。
「おかえりー悠希くん!」
「た、ただいま爽世さん……ん?」
靴を脱いでいると、僕の目の前に白い封筒が差し出された。
「ねぇこれ見てー! 私が買った写真集の応募券で……悠希くんの名前で出したら当たっちゃったのー!」
「写真集って……えっ!?」
封筒を開き、中身を見ると目を疑った。
「こっ、これ! 握手会の入場券!?」
「そう! びっくりしちゃったー! 最近悠希くんバイト頑張ってるみたいだから、当たったら行って欲しいなって思ってたの。今度のお休みはバイト無かったでしょ?」
「っ……」
当たる訳ないし、僕みたいなのが赤羽様に顔を見せられないと思って応募出来なかったのに……。
爽世さんの運はすご過ぎるし、とても良いお義姉さんだと思う。でも……
「ぼ、僕会いに行くのはちょっと……」
「やっぱり……きっと悠希くんは会いたいけど、いろいろ気にして応募してないと思ったの。でも同じ高校でも芸能人に会うの難しいんでしょ? 芸能科の生徒が普通科の校舎に来る事は出来るけど、その逆は出来ないみたいだし。こんなチャンス滅多にないんだから、行っておいで」
ふわりと微笑んだ爽世さんに、頭を優しく撫でられてしまった。恥ずかしさで顔に熱が集まった。
「ほっ、本当に良いの?」
「良いの、行ったらサインと写真見せてね。私も汰斗くん好きだもん」
爽世さんは、僕の趣味を知っても普通で居てくれた。一緒に赤羽様を応援してくれる本当に良いお義姉さんだ。
そんな爽世さんがせっかく背中を押してくれているんだから。僕の為に応募をしてくれた爽世さんの為にも、一歩踏み出してみようかと思った。
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