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「でも、今まで一人だった僕が赤羽さんと一緒に居て目立っちゃったから……よく思わない人が出てくるのは当然だと思うんです。昔の僕なら逃げちゃうと思うけど。今までみたいに何も行動を起こさないで逃げるような事を、したくなかったんです」
彼のファンとして。彼を好きな想い人として。例えこの想いが届かなくて片想いでも、自分の想いを歌で伝えたかった。
「でも結局緊張して体調も崩して赤羽さんに頼ってしまったから失敗に終わっちゃって……申し訳無いです。歌……ちゃんと唄いたかったのに」
「何言ってるの。大成功だよ」
「だ、大成功……?」
首を傾げる僕に彼は呆れた様子で溜め息を付いた。
「気付いてなかったの? 俺も驚いたけど……他の観客も驚いてたよ。普通科であんなに歌が上手い生徒居ると思わなかったから。それに見た目も可愛いって、みんなすごく悠希くんに注目してたよ」
彼の言葉はとても大袈裟に聞こえるから、そんな事有り得ないと自分の中で思ってしまう。戸惑っているそんな僕の頬を、彼は優しく撫でた。
「っ……あ、赤羽さん?」
「……前髪切るのは俺が言った事なのに、失敗したかな。本当に悠希くんを独り占め出来なくなりそうだ」
「えっ……あ、やっぱり僕の顔ダメですか……?」
「そうじゃないよ。俺、自分の部屋に君を招いてからずっと頭の中に君が居るんだよ。仕事をしてドラマの撮影で誰かに触れる時、相手が君だと思っちゃうんだ。君にキスしてからね」
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