2人が本棚に入れています
本棚に追加
私の居場所
私の居場所。それは誰にも邪魔されることなく背中を預けられる場所。そしてその背中に沿うようにお母さんの体温が私に伝わる。足元から伝わるその冷たさなんて私には関係ない。だって私の体はいつもここに居場所があるのだから。
「お母さん、お父ちゃん、今日は遅いねぇ。どこへ行ったの?」
「あなたも大人になれば分かることよ」
いつも質問する答えは必ずこれだった。でも今日は違った。
「お母さん。今日も父ちゃん、遅いね?」
「アウー?」
その回答はいつもと異なる。それどころか声も違った。いつもの居場所から背中を離して後ろを振り返る。茶色く湿った大きな皮がそこにあった。そして上を見上げるとヒゲに白い角……いや、牙があった。これはセイウチだろう。お母さんが昔に教えてくれた。道理でさっきまでじめっとしていたわけだ。
「アウー?アウアウー?」
そして教えられたのは奴が危険だということも。セイウチは体を動かしては頭を上下に揺らしてる。
「僕は美味しくないよ?」
「アウー?アウアウ。アウー!!」
最初のコメントを投稿しよう!