私の居場所

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いつの間にか氷の上にいたのだろう。ここにいてもしょうがないが、海に泳ぐなどそんなことも出来ない。一つだけ出来る事は奴に食われることだ。私は息を吸い吐いて奴の動きを待つ。 「フンガ!!」 シロクマは勢いよく私に駆け寄った。しかし私は気が付いたら海の中にいた。見たことのないその景色と私の体の動き。そして私の背中に感じる何とも言えないようなぬくもり。動き回る魚たち。私は後ろを見たが、奴もまた泳ぐことが出来た。 しばらく泳いで後ろを見ると、シロクマはその場にいなかった。諦めたのだろう。しかし近くに大きな魚がいた。シャチという生き物かもしれない。 「キュイーン。キュイ?」 何か可愛らしい音が聞こえてくる。それどころか私を背負って海の中に泳いで行く。その真上に大きな影が動く。私を乗っけた生き物は勢いよく海面から跳ねた。その太陽に照らされたこの生き物と大きな生き物のことを知っていた。海面を見ていた時に母親に聞かされていた。私を乗っけてくれているのはイルカで大きな方はクジラだ。どちらも何もしなければ私たちを助けてくれるらしい。 「キュイ!!」 クジラから離れたイルカは私を背負ったまま氷に背を向けて私が降りやすいように降ろした。そこには私と同じペンギンがそこにいた。 「お父さーん、お母さーん!!」 絞り出した声で彼らを呼ぶ。しかしそこに集まったのは見知らぬ親子たち。     
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