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「何、この子。捨てられた子よ?面倒見てあげないと……」
「でも私たちはこんな子よりも大事な我が子がいるし」
「子どもを捨てる親子なんて顔が見たいわ」
散々な言われようである。そんな中でも私は訂正した。
「捨てられたんじゃない、迷子なんです」
「変わらないじゃない?だって手放してるんだから」
私の答えに含み笑いするペンギン。私はこの場から離れたかった。海に入ろうとする時、大きな魚がいた。イルカだと思ったが、黒と白。そう、アイツだ。私は躊躇して立ち止まった。
「早く行けよ、クズ」
「痛っ……」
私のぬくもりを求めたその背中に子を守る母親ペンギンの足が当たる。そのまま私は海へと落ちた。このまま死ぬのだと思った。しかし違った。海と泡で何が起きたのかよく見えなかったが、私の腹の上に茶色い背中が触れる。その背中はセイウチだ。その背中から見える右足に痛々しい赤い傷跡が付いていた。私は直感した。このセイウチは私の背中を預けたセイウチだ。そしてあの氷の血はこの者の血であったのだ、と。
セイウチは私をとある氷の上に降ろす。そして自らもその身を氷の上に上げた。そこに二匹のペンギンが立っていた。
「お父さん、お母さん!!」
「我が子よ、よくぞ帰って来た」
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