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体育館にはすでに生徒たち全員が待っている。まずは校長先生が朝の挨拶をしたけど生徒の中には話し続けてる子たちがいた。
やっぱりいつの学校も口を閉じていられない子はいて当たり前らしい。
「続いて青葉カナさんに登場してもらいます」
するとさっきまで聞こえていた話声が消えた。これはこれでまたやりづらいなあ。
「では青葉さん、よろしくお願いします」
鈴木先生にそう言われ舞台の中央にあるスタンドマイクの前に立つ。
「こうして会うのは初めまして。青葉カナです。一ヶ月話を聞いてくれてありがとうございます」
心を決めていたので、緊張は驚くほどしていない。
「今25歳の私がなんで毎週朝に話ができたのか不思議に思った人もいるはずです。
ほとんど人なら会社へ行っています。私にあるのは中卒という情けない中途半端な学歴です」
「もちろん中卒の人が悪いという意味ではないです。私の場合学校に馴染めず、不登校のまま卒業したんです」
ここまで言うとさすがに生徒たちはざわついた。
予想していたから少しも気にならない。むしろ胸を張っていられた。
「不登校になった時自分は不必要な存在だと思い続けたところ、両親から植物をもらいました。水をあげて日光を浴びせ、しっかり育てること。この植物は私がいないと生きられない、そう言われました」
「不必要な人なんていない。みんなそれぞれ、必要とされる場所が違うだけなんです。
それを見つけるのは容易ではないです。
だから人生は辛いし、思い通りいかない。挫折して苦しみます」
「でも苦しいだけで終わりません。
私は学校から馴染めず逃げたのに25歳になって学校と居場所に戻りそこに居場所を感じました。
それは話を聞いてくれた生徒のみなさんがいたからです。ありがとうございます」
生徒たちはざわつきは止まっていた。代わりに私のことを真剣なまなざしで見ている。
この真剣な眼に私は応えたい。
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