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「止まりなさい」
僕は背中から首筋にナイフを突きつけられた。強盗だ。
身体はとても柔らかく、声や香水から女性であることがわかる。
恐る恐る後ろを見ると、金髪で背も少し高いじゃないか。
「そのまままっすぐ進みなさい」
とても澄んだ声だった。こんなに美しい強盗がいるものなのか。
金髪の強盗は僕を妙な扉の前まで連れて来た。
まるで狛犬のように、ガーゴイルっぽい格好をした戦士が槍を突き立てていた。
「天使殿、こやつは?」
「宮殿の中をうろついていた。魔王様にお会いしたい」
「ははっ」
きしむ音を立てて扉が開いた。何だか頭がこんがらがって来る。
このゲームチックな2人組はなんだ。こいつら美女強盗をテンシとか言ってた。で、マオーサマってなんだ。強盗団ではなく、怪しい宗教団体に捕まったのかもしれない。
金髪の強盗に拉致され、妙な男の前に引っ立てられた。
暗がりでよくは見えないが、男の頭には角が生え、口元には牙が、背中にはコウモリのような翼が生え、黒いローブを纏っている。デーモンと呼ぶに相応しい格好だが、逝っちゃったコスプレ男と考えるのが自然だ。
コスプレ男は言った。
「お主が遅れるとは珍しいな」
「はい、不審な者がうろついていたので捕らえました」
金髪強盗の分際で。お前らに言われたくない。
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