始まりの終わり

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オーナーズルームの前に着くと、真純はまたオーナーから嫌味たらしく怒られるのかと憂鬱な気分になりながら、扉の前を右往左往していた。しまいには、ドアの前で蹲ってしまった。 真純が下を向き頭を腕で抱えているとカチッという音が聞こえた。 恐る恐る真純が顔を上げると、こめかみに血管を浮き上がらせ扉の枠に体を預け、にっこりと笑っているオーナーがいた。 真純はマズいと思ったのか、身体が勝手に後退りしてしまった。 「なーんで、真純ちゃんは座り込んでて、あまつさえ逃げてるのかなぁ? 」 「あ、いえ、条件反射です」 怒りを笑顔で表しているオーナーに対し真純は開き直っていた。どうせ、クビになるのだろうと思い、下を向くとオーナーが真純に言った。 「……はぁ。お前と話してると怒る気が失せるわ。とりあえず、部屋に入れ」 「いや、いいです。帰ります」 真純のその言葉を聞くや否や、オーナーは真純の腕を掴み部屋に無理やり引き入れた。 ガチャン…… 頑丈な扉は無残にも閉じられた。 「オーナー、何するんすか?オレ辞めるんで、帰りますから手放して下さい」 真純の決死の抵抗にも関わらず、オーナーは真純の体から発せられる甘い匂いに気づいた。 「真純は悪い子になっちまったな。女の香水の匂いプンプンさせて……お前は辞めさせない。どんなに嫌がろうとな」 真純は図星を突かれて、頬を紅潮させた。     
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