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見たことがある気がしなくもない街並み。どこを見てもなぜか少し嫌悪感があった。
「…カフェ?」
カフェと言われ強引に連れてこられた場所は、とある家のような建物。カフェには見えず、抵抗する。
「家を改造して作られたカフェなんだよ。」
男性はにこやかに微笑むと、アキをその中に誘導した。
なんだか嫌な感じがする。何か、という根拠はないけれど。
疑問を抱きながら強い力に引かれて中へと入っていく。
「…帰る。」
目の前の光景は、やはりカフェらしい雰囲気などではなかった。
手を振り払って帰ろうとすると、さらに強い力で掴まれる。
「離せっ!」
「やっと見つけたんだ。もう離さないよ?」
気持ち悪い笑みを浮かべた男性は、そのままこちらを抱きしめてくる。
…痛い。
見つけた、とは、なんなのだろう。
「さっきから、本当に、なんのことを言っているんですか?人違いです。」
はっきり言い放つと、男は顔をしかめた。少し怒っている表情だ。
「そんなわけないだろう。その顔を見間違えるわけがない。」
そこまで言うなら、自分かもしれない、と思う。でも、それはアキではない。アキトだった頃のアキだ。
「…本当に…
記憶がないんです。」
にやり、と、男がさらに気持ち悪く笑んだ。
「じゃあ全て教えてやろう。」
アキはその厭らしい視線に、ぞっと身震いしたのだった。
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