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目を開けると、何もない殺風景が広がっている。背中には固いものが当たっている。ベンチの上のようだった。 今は何時だろう… バッグの中のスマホを見ると、時計は午後8時を示している。 何があったのか全くわからない。自分の過去を探るために母親の住所の最寄り駅まで来て、それから… なんでこんなところにいるのだろうか。 アキは自分の脳内で、また記憶に靄がかかったような不思議な感覚に襲われていた。 ところで、どうしよう。スマホはもうほとんど充電がなく、湊からの着信とラインが100件以上入っていた。 …心配性なんだから。 と思いながらも、こうなってしまったらもう湊以外に頼る人はいないから、湊に電話をかける。 3分弱コールを鳴らし、充電が切れる。結局湊は出なかった。 近くに建物は見つからない。ただ、山道のような風景が続いている。暗い中を少し歩くと、案外勾配が急で、すぐにガタがきてしまった。そして寒い。 アキは結局さっきいた場所に戻り、そのままベンチに腰掛けると、体育座りになってコートの中に足を隠した。 「アキト!!」 目を閉じようとすると、声がした。…幻聴かと思ったが、はっきりと聞こえる。     
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