233人が本棚に入れています
本棚に追加
振り返るとそこには、車から降り、息を切らせて駆けてくる湊がいた。少しお骨話ている様子だ。
「どうして…?電話出なかったのに、、、」
その温もりに顔を埋めたい。寒くて心細かったから、温めてほしい。そう思うけれど、アキトだったらそんなことをしないから、アキは必死で我慢した。少し、泣きそうだ。
「アキトがあんまりよくいなくなるから、GPSを登録しておいたんだ。よく事件に巻き込まれるだろ、お前。」
事件…?そんなこと知らない。アキがどんなに記憶の中を探っても、事件らしきことは思い当たらなかった。
「俺、なんか事件に巻き込まれてたっけ?」
声がくぐもっているのがわかる。アキトの振りをしようとしているのに、どうしても安心感から出る涙が溢れてしまいそうで。
「お前、
…泣き虫になったな。」
ぎゅっと抱きしめられ、大好きな匂いが身体を包んだ。頭を優しく撫でられると、もうだめで。
「泣き虫なのは、嫌い?」
そう言っていたずらっぽく上目遣いで問うことが、今アキに出せる精一杯のアキトっぽさだった。完全になり切ろうと思ったのに、これでは意味がない、と反省する。
「…悪くない。」
そう言って微笑む湊が、甘いキスを涙で濡れた唇に落としてくれた。
そのあと車で帰っていると、先ほど見た景色が見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!