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どうしてかはわからないが、自分は近くの山道の中間地点にいたようだ。短時間では車でしか来れないような距離を登って。 どうしたの?と聞いてきた湊の問いに、思い出せないんだと答えると、湊は不安そうにアキを見た。また記憶の不調が起こることを恐れているのだろう。 静かな空気に耐えられず、アキは寝る振りをしてごまかした。 家に帰るとすでに食事ができていた。マカロニグラタンにミートパイとサラダ。アキの好物ばかりだ。 …でも、アキトはあまりグラタンが好きではなかったはずなのに、どうしてだろう。 「美味しい?アキト。」 「…グラタン苦手…」 「でも食べるんだ?」 「湊さんがせっかく作ってくれたから。」 湊がそうかと微笑む。その笑顔を見て胸がぎゅっとなった。偽りの自分を愛してくれる湊。彼は本当に幸せなのだろうか。ふとアキは思う。 でも、多分幸せだろうという結論に落ち着く。もし本当のことを言っても、楽になるのは恐らくアキだけなのだから。
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