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昨夜湊は何も言わずにただいつも通りにアキと接してくれた。ちなみに湊が少しだけ触れたアキトが巻き込まれた「事件」については聞いても少しも教えてくれない。本当に全くわからないから、出かけている湊の部屋で、アキは何か手がかりを探していた。 ・・・とはいえ湊の部屋にはパソコンとタブレットと大量の本しか置かれていない。 昨日きっとアキの記憶が曖昧になっているところで何かが起きた。確かに少し怖いけれど、もう一度行ってみるか。 結局電車を乗り継いで、アキは昨日と同じ行動を繰り返した。 改札を降りると、手帳の住所が書いてある場所に向かう。地図を見ながら向かった先は、小さなボロアパートだった。 ・・・すごく嫌な感じがする。思わずこみ上げた吐き気に一度屈み込む。やはりここで何かあったのか・・・? 「アキトくん・・・?」 ふと聞こえてきた高い声に振り向くと、そこには小さくかわいらしい女の子が立っていた。歳はアキと同じくらいだろうか。 「やっぱりアキトくんだ。久しぶりだね。 ・・・今ちょっといいかな?」 上目遣いに誘われて少しどきりとする。かわいい。でも、俺はこの子を知らない。知らないけれど、何か教えてくれるだろうか。 昨日のように記憶が飛ぶのは嫌だから、スマホに軽くメモを取る。 「あの、俺、実は事故で記憶が曖昧になっているんだ・・・。 だから、過去の俺について教えてくれないかな?」 そう伝えると彼女はああ、と声を漏らしてから、良いよと答えた。 「ファミレスでいいかな?今ちょっとお金なくて。」 ちょっと恥ずかしそうにそういうと、彼女は俺の手を取り歩き始めた。 「俺が払うから大丈夫だよ。」 「んーん、アキトくんにはお礼がしたいから、私に払わせて。」 足取り軽やかに、可憐に微笑む姿に、どこか見覚えがある気がした。嫌な感じはしない。むしろ彼女に対して俺はいい印象を抱いているようだった。
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