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「だけど、事件っていうのは?」
そう、事件というのは、どういうことだろう。確かにそこに俺がいたことで十分事件だけど…
震える彼女に罪悪感を感じながらも、さらに離すように促した。愛理も絶対に話すのをやめまいと、少しずつしっかりと口を動かす。
「アキトくんは、私を庇って…
私を逃して…
10人以上に輪姦されて…
私っ…!警察を呼んだんだけどっ…
その時にはもう、遅くてっ… 」
なんだか他人についてのドラマを見ているようだとアキは思っていた。だってそんな過去、あったとは思えない。今の自分はただの平凡な人間で、アキトだった頃の記憶だって湊との幸せなものしかないのだ。
「それで…?」
だから、聞いていて特別つらいということはなかった。
「アキトくんのことを警察も総出で探して…
でも結局、見つけたのは湊さんだったの。アキトくんは見つかった時本当にひどい状態で、山奥に捨てられていたそうよ…。
噂では、組織を起訴しない条件に、その上部を突き止めて脅しに行ったとか…
それから、湊さんはアキトくんと湊さんが完全に同棲することを条件にお父さんを許したそうだけど…
あの時、私っ…、私が残っていたらって…
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