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目が醒めると、鼻を愛おしい人の香りがかすめる。アキはまだ瞑っていたい瞼をゆっくりと開くと、細いのに筋肉質なたくましい腕の中にいることに気づく。
「ふふっ、おはよう。湊さん。」
アキの左手と、アキの首の下を通る腕から伸びた湊の手のひらは、硬く繋がれている。幸せな朝だ。
これが本当に自分に向けられたものだったら尚更いいのにと、欲が出てしまいそうなほど。
昨夜は窓の外の雪を見ながら、手を繋いで目を閉じたのだと思い出す。湊の表情は柔らかかった。
湊さん、と彼を呼んでいたのは、昔の自分だ。でも、今のアキはそのフリをしている。
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