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静かな車内に、いつものクラシックが響く。湊の端正な横顔は、表情ひとつ変えずに前だけを見つめていた。 窓の外を呆然と見つめる。昨日来た時より、その景色を見たことがある気がしていた。行った記憶はないのに、昔写真で見たことがあるような、不思議な感覚だ。 そしてある一点で、車が停められた。山道で、そこだけやけに新しいガードレールに、花が添えられていた。その景色を、アキはやはりどこかで見たことがある。 湊は車から降りると、アキにもそうするように促した。湊はその新しいガードレールを緩やかになぞると、その上にそっと腰掛けた。 「本当は、黙っているように言われているんだ。」 そこで言葉を切り、湊は一度空を仰いだ。雲ひとつない春の青空はどこまでも広く続いている。 「でも、これ以上事件に巻き込まれるお前も、アキトのフリを続けるアキも、見たくない。」 アキトのフリ、と言われ、アキはどきりとした。とてつもない後悔の波がアキを襲う。湊は、知っていたのだ。アキがアキトという存在のふりをしていることが。
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