233人が本棚に入れています
本棚に追加
「…いつから、気づいていたの?」
「…昨日、倒れていたお前を拾った後、泣いていただろう?その時、1番おかしいと思ったんだ。
その前からもなんとなく違う気がしてた。グラタンも、アキトならもっと不味そうに食べていたし。」
「…ごめんなさい…
アキトに、なれなくて。合わせてあげられなくて…」
どうしようもなく申し訳なくなる。アキがアキトのふりをしていると知った時、湊は最愛の恋人を手に入れたそばから失ったのだ。
泣いてはいけないと知っているのに、自然と涙がこぼれおちた。辛いのは自分ではなく湊なのに、アキは自分の弱さにとてつもなくイライラした。
「いや、アキトには会ったよ。」
優しげに微笑まれる。
「…どう、いうこと…?」
「昨夜、別れを告げたよ。口止めされたけれど、アキにはアキトを背負って生きて欲しいから、
…俺のわがままだ。聞いたらきっと、辛い思いをする。それでもいいか?」
固く頷く。湊が何を言っているのかアキにはよくわからなかったが、アキにはアキトのことを知る義務がある。
自分の過去のことをしっかり知る必要があるのだ。
「アキトはね、
…本当は、自殺するつもりだったんだよ。父親を巻き込んで。」
今日の風はどこまでも冷たい。それと同じくらい湊の言葉は冷たく、悲しげだった。
最初のコメントを投稿しよう!