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今辛いなら、それは幸せのための貯金だと、書いてあった。誰にでも思いつきそうな綺麗事だけれど、そのストーリーを通すと、その言葉がやけにしっくりとくる。 大学1年生の夏、いつもの淫らな奉仕から帰る途中、偶然彼を見つけたのだ。 その時のアキトは、幸せでたまらなかった。だって、自分の心の拠り所を綴った彼に、こんなところで出会えるなんて、どれほど幸せなことだろう。 そして彼が雪を見て涙を流していることに気づいて、その孤独を埋めたいと思った。こんな人生を歩んでいたら、自分が本番で抱かれるのも、時間の問題だ。 初めてはこの人がいい。この人の孤独を一度でも嫌せたら、俺はそれで一生幸せだ。そう思ったから。 湊とはそれから少しずつ距離が縮まって、アキトの奉仕はつづいていたが、湊といるだけで幸せだった。 愛理は、父の不倫相手の娘だ。しかし愛理が来た時、その絶望した表情を見て、アキトは助けたいと思った。 神様が自分に湊という幸せをくれたのだから、今度は俺がこの子に手を差し伸べたい。 そして、今に至る。現在アキトは湊と住んでいるが、会うたび衰弱していく母が心配でたまらず、時々会いに来ているのだ。ひどく痩せこけ、傷だらけで。 だからある日、母にある提案を持ちかけた。 「父さんを殺そう、母さん。」
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