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どうしてアキト…、いや、おそらくアキトのふりをしているアキは、あんな場所に戻ったのだろう。
湊はアキの部屋に入り、苦しそうに眠るその横顔をじっと眺めていた。
あの付近にはまだ、アキトに性的奉仕を強いていた者たちが住んでいる。
そして記憶にないようだが、アキは明らかに何かをされたようだった。
あんまり遅くまで帰ってこないから、湊は心配でアキの靴につけているGPSを、追跡した。なぜこんなものをつけたのか、理由は今回のようなあって欲しくもないもしもに備えてだった。
「アキト… 」
その白いほおに優しく手を触れると、自然とそう言葉が漏れてしまった。どう見ても彼は、アキトなのだ。でも、違う。
涙で視界がぼやけていく。アキのことは好きだ。でも、アキはアキトじゃない。湊はアキトを裏切りたくはないのだ。
せめて、最愛のアキトに一言別れを告げられたら、湊の決意は変わるのだろうか…。
ぽたり、とアキのほおに雫が一滴降り注いだ。
「…湊さん。」
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