3

4/10
前へ
/34ページ
次へ
どうしてアキト…、いや、おそらくアキトのふりをしているアキは、あんな場所に戻ったのだろう。 湊はアキの部屋に入り、苦しそうに眠るその横顔をじっと眺めていた。 あの付近にはまだ、アキトに性的奉仕を強いていた者たちが住んでいる。 そして記憶にないようだが、アキは明らかに何かをされたようだった。 あんまり遅くまで帰ってこないから、湊は心配でアキの靴につけているGPSを、追跡した。なぜこんなものをつけたのか、理由は今回のようなあって欲しくもないもしもに備えてだった。 「アキト… 」 その白いほおに優しく手を触れると、自然とそう言葉が漏れてしまった。どう見ても彼は、アキトなのだ。でも、違う。 涙で視界がぼやけていく。アキのことは好きだ。でも、アキはアキトじゃない。湊はアキトを裏切りたくはないのだ。 せめて、最愛のアキトに一言別れを告げられたら、湊の決意は変わるのだろうか…。 ぽたり、とアキのほおに雫が一滴降り注いだ。 「…湊さん。」
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加