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「湊さん、俺ね。」
そこからアキトが話した言葉は、湊が事件で知ったことが半分、全く知らなかったことが半分の、深く悲しい物語だった。
アキは中学生の頃、父親に連れられた先でショックを受け、自ら命を絶とうとした。そこで、防衛本能から生まれたのが、アキトという新たな人格だった。
アキは起きれば命を絶ってしまうから、アキトはずっとアキの代わりに父親に強いられる性的な虐待に耐え続けた。
しかし自分もどうしていいかわからず絶望していた時、湊の小説に出会ったのだ。
それからのアキトの生き方は前向きだった。生活に伴う嫌なことは変わっていなくても、考え方が変わるだけでここまで人生は明るくなると、アキトは知る。
そして湊に会い、幸せを過ごし、事件に巻き込まれ、父を殺し…
アキトはもう、死んでもいいと思っていた。どうせアキに変われば死んでしまう。湊以外に抱かれた汚れたからだなんていらない。
それなのに、母親はアキトを守った。
目覚めたのは、記憶をなくした主人格である、アキだった。
そんなことを、アキトは淡々と語っていった。
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