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「もう、会えないのか?」 わかりきった質問をした。また会えるよ、と嘘でもいいから返して欲しくて。 「会えるよ。俺はアキの中にいるから。俺としては出てこないけれど、次第にアキの中に溶け込んでいくんだ。 ココアの中のマシュマロみたいに。だから、いつでも会えるよ。」 そのいつでも会える、は一生会えないと同じ意味だと湊は思った。 アキトが震えはているのはきっと、こうは言ってもやはり消えてしまうのが怖いからだろう。 「なあ、アキト。一つだけ、お願いを聞いてくれないか?」 アキトは驚きをその顔に浮かべてから、小さくうなずいた。 「いいよ、何?」 「…写真を撮ろう。アキトという存在が、生きていた記憶を、せめて俺の中にだけは、刻ませてくれないか?」 「やだ。写真嫌い。」 そう言う声は少し拗ねている口調で、嫌がっているようには聞こえない。湊は少し震えの治ってきた彼の肩を優しく抱き、強請るような口調でもう一度言ってみる。 「一枚だけだよ。」 「…仕方ないなぁ。一枚だけだよ。」 ため息混じりにそう言うけれど、彼はなんだか嬉しそうで。 一回きりと言う約束で撮った撮ったその写真の中で、アキトは柔らかに微笑んでいた。 「さよなら、湊さん。」 抱きしめたアキトの体から、だらりと力が抜けていった。
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