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湊が淡々と話しているのを聞いて、アキはなぜか泣いていた。 なぜ、泣いているのかはわからない。それはもしかしたらアキの体の中の、アキトの部分なのかもしれなかった。 「アキトには止められたけれど、やっぱりどうしても伝えたかった。もちろん、アキがこんな風に詮索するからっていう理由もあるけども。 アキ、お前がアキトじゃなくても、そう振る舞ってくれようとした、その捨て身の優しさが好きだ。 でも、俺はまだアキトのことも好きなんだ。 …こんな、半端な気持ちなんだ。捨て身で俺を救ってくれようとしたお前に対して、申し訳ないと思っている。」 そんなことない。湊はいつだって俺のそばにいてくれた。記憶をなくして、本当は不安でたまらなくて、いっそ死のうとしたときだって、止めてくれたのだ。 アキは自分の気持ちをどう表せばいいのかわからず、口をパクパクさせた。しかし、いきなり勝手に喉から声が出てきて、困惑してしまう。 「バカだなぁ。湊さん。言わないでっていったのに。 …でも、ありがとう。どちらも別々の人として、俺を好きになってくれて。」 気づけば泣いていた。 何が悲しいのかもわからず、ただ泣いていた。 ああ、そうか。夢で泣いていたのは、アキトだったのか。自分で操縦することができない、勝手に動いている自分の身体について、アキは妙に納得がいった。 そして今もまた、言葉を発したのはアキトだろう。 「湊さん、今度は本当に、さようなら。アキ、幸せにね。」 ドット流れ込んできたアキトの感情に、アキは戸惑った。それはとても優しく温かく、しかし辛く悲しく、まるで彼の人生すべてを物語っているようで。 「…湊、俺と、幸せになってください…。」 自然と口から出た言葉を受け取り、湊も自然と頷いた。 お世辞にもいい環境に産まれたとは言えないけれど、アキはアキトに守られ、湊に守られてきた。だから、幸せになる権利があり、義務がある。 「ねえ、今度は、俺として、初めてを貰ってくれる…?」 すこし早急すぎるだろうか。しかし、今彼と身体を重ねたかった。 「…ああ。じゃあ、近くのホテルに行こうか。」 「うん。」
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