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できた男だ。
先ほどまでの面影は一切ない。湊より少し遅れて階段を降りキッチンへ行くと、影のあるクール系のイケメンがエプロンをして片手で卵を割るというドラマのワンシーンのような光景が再生されている。
まあ、こっちの方がいつも通りだよね…。
湊に聞きたいことがあるアキは、そのまま彼の後ろでつまみ食いをしながら昨日の疑問を口にした。
「湊さん、それで、俺の事故のことなんだけど… 」
「ああ、そのことか。食べながら話すからちょっと待ってて。」
えらく絵になる男だと思う。テキパキと器用に朝食の用意をする姿は、なんというか、本当にただのイケメンだ。
こんな人を、射とめたんだもんな。昔の俺、すごい…
くだらないことを考えながら大人しくテーブルにつく。間も無くして、フレンチトーストと昨日のシチューを作る際に一緒に作ったであろうコンソメスープが運ばれてきた。
「美味しそう。いただきまーすっ!」
アキトに寄せて陽気な口調を心がける。湊はそれを愛おしそうに見守り、向かいのテーブルについて同じものを食べ始めた。
短時間でなんでこんなに味がしみるのだろう。フレンチトーストは口に入れた途端にトロリと溶け、バターの香ばしさと甘みが口いっぱいに広がる。そういえば電子レンジの音がしたが、それをつかったのだろうか。
口が幸せだ。甘いフレンチトーストに甘くない紅茶、コンソメスープ…。完璧だ。
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