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とりあえず行動するか… 湊は多分心配するだろうから、◯◯駅に行ってきますと書き残し、家を出る。 電車のホームを見ても、今は飛び込もうなんて思わない。アキトとして湊に必要とされているからだ。 よく、見慣れた光景だ。夜遅く、湊の小説を横目に読んだのも、この列車の中でだった。ところで終電なんかに何で大学生が乗っていたのだろうかと思う。それも思い出さなければいけない。 その駅に着くと、昔一枚だけその風景の絵を見たことがあるかもしれない、程度の微かな見覚えがある気がした。しかし本当に何も思い出せない。 とりあえずあの住所まで行ってみるか… 改札を出て、地図を覗く。 「姫斗?」 ふと、後ろで声がした。自分とは全く関係のない名前を呼んでいるが、アキの周りに他に誰かはいない。振り返ると、30代半ばほどのメガネをかけた男性が、こちらを見ていた。 「あの、人違いです。」 一言残して去ろうとすると、瞬時に手が掴まれる。 「いや、姫斗だろ?」 「俺の名前はアキトですが?」 よくわからないがそんな可愛らしい名前に縁はない。 「だから姫斗だろう…? 最近会えなかったからなぁ。今日、どうかな?」 「どうって…? 」 「とりあえずカフェでも行こう。奢るから。」 強い力で引っ張られて、抵抗できない。まあ、カフェくらいならいいか…。何かつかめるかもしれないし。
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