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「ん?」
嬉しそうに弾んだ声と、躊躇うような沈んだ声。
あんまり、いい話じゃなさそうだ。
『最近ね、聖司と連絡が取れなくて。大学生だし、心配のし過ぎだとは思うんだけど……やっぱり、不安になっちゃってね』
優美さんの落ち込んだ顔が見えるような声に、貰ったばかりのクッションを腕に抱える。
今、彼女が求める答えはなんだろう。
「……そうだよね。聖司には、俺から言っておくよ」
『ごめんね、涼介。いつも迷惑かけて』
これが正解か。
優美さんの、少し浮いた声のトーンに、こっそり息を吐く。
彼女が聖司に伝えるより早く、喧嘩せずに済む1番の方法だ。
「ううん、気にしないで。わざわざ電話ありがとう、嬉しかったよ」
『それは良かった。また、連絡するね』
プツンと、惜しむことなく切れる通話。
耳の奥に残った優美さんの明るい声に正反対な、重いため息が漏れる。
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