第1章 檻の中の双子

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体とは違う疲れに、クッションを抱えたままベッドへ背中から倒れる。読むつもりだった本に手を伸ばす元気さえ、今はちょっとない。 今手放したばかりの携帯に目を遣れば、午後11時の文字。どうせ今日も、聖司はまだ帰ってこないんだろう。 去年からあった聖司の夜遊びが、今年に入ってから急に酷くなった。もちろんそんなこと、優美さんには言えないし、関わるのも面倒で放っていたけれど。 「……言った方がいいのか……」 ぼそっと呟いた自分の声に、思わず眉間に皺が寄る。 俺が言ったところで、状況なんて変わらないんだろうけど。 うとうと微睡む意識の隅に、聖司の嫌そうな顔が見える。 あいつは、俺のことが大嫌いだから。 きっと、言うことなんて、聞かないんだろうな。 *** 「ん、……っくしゅ、ぅ?」 ずる、と鼻をすすって、ぼんやりとした視界の眩しさに目を細める。
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