第1章 檻の中の双子

16/20
前へ
/38ページ
次へ
今、何時だ。 もぞもぞ体を動かして、すぐ側に落ちていた携帯に手を伸ばす。 「……夜中の、2時!?」 どうやら、あのまま寝てしまっていたらしい。風呂にも入っていないし、服だってそのままだ。 とりあえずシャワーだけでもと、部屋を出た瞬間、玄関のドアが開く音がした。つられるように向けた視線が、帰ったばかりの聖司のと重なって、すぐに逸らされる。 「……おかえり」 靴を脱ぐため、みたいに下げられた視線はわざとらしくて、嫌な感情がぐずぐず溶け出す感じがする。気持ち悪い。 「ただいま。珍しいじゃん、起きてたの?」 「別に……つか、何してたの。こんな時間まで」 トン、と壁に背中を預ける。 玄関からリビングに入った聖司の訝しむような視線が、珍しく真っ直ぐ刺さった。 それもそうか。いつもなら、こんなこと聞いたりしない。きっと、優美さんからの電話が、尾を引いてるんだ。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加