第1章 檻の中の双子

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「は? 何、急に。お前に関係なくね?」 想定したとおり、聖司が嫌そうに顔を歪める。ばさりとソファーの背に掛けられた聖司の上着から、ふわりと女の匂いが漂った。 「……今日、優美さんから電話があった。お前が電話に出ないって、心配してたんだけど」 化粧とか香水とか、女独特の甘い匂いに、思わず眉を寄せる。俺はこういう匂い、あんまり好きじゃない。 「夜遊びだか女遊びだか知らないけど、度が過ぎるんじゃないのか。今まで黙ってたけど、さすがに」 「うるせぇな」 俺の声を遮る、俺の知らない聖司の低い声。 声変わりをする前から、喧嘩なんてしたこと無かったから、聖司の怒った声を聞くのは初めてだ。 常より低い声に身長差も相まって、威圧感を放つ聖司に思わず目を瞬く。そんなに、怒ることなんだろうか。 「親の心配なんか知らねぇよ。度が過ぎるとか、お前基準で決めてんじゃねぇ」
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