32人が本棚に入れています
本棚に追加
「は? 何、急に。お前に関係なくね?」
想定したとおり、聖司が嫌そうに顔を歪める。ばさりとソファーの背に掛けられた聖司の上着から、ふわりと女の匂いが漂った。
「……今日、優美さんから電話があった。お前が電話に出ないって、心配してたんだけど」
化粧とか香水とか、女独特の甘い匂いに、思わず眉を寄せる。俺はこういう匂い、あんまり好きじゃない。
「夜遊びだか女遊びだか知らないけど、度が過ぎるんじゃないのか。今まで黙ってたけど、さすがに」
「うるせぇな」
俺の声を遮る、俺の知らない聖司の低い声。
声変わりをする前から、喧嘩なんてしたこと無かったから、聖司の怒った声を聞くのは初めてだ。
常より低い声に身長差も相まって、威圧感を放つ聖司に思わず目を瞬く。そんなに、怒ることなんだろうか。
「親の心配なんか知らねぇよ。度が過ぎるとか、お前基準で決めてんじゃねぇ」
最初のコメントを投稿しよう!