第1章 檻の中の双子

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「はぁ? 親に心配かけさせてんのはお前だろうが。知らねぇとか、ガキみたいなこと言ってんな」 心配してくれる親がいて、それを当然だなんて思ってるから、そんなことが言えるんだ。 無性に腹が立って、思わずそう言い返したら。 「っ!」 ゴス、と鈍い音が耳の横で響く。 壁に打ち付けられた握り拳の音にも視線は逸らさず、苛立ちの滲む聖司の顔を睨み上げる。 今は、この身長差さえ腹立たしい。 「何、それで脅してるつもりか? いい加減にしろよ、お前。女だか何だか知らないけど、優美さんに心配ばっかり」 「また母さんかよ……」 「は?」 ゆらりと、聖司の体が離れる。 詰められていた分の距離が開いて、あっという間にそこを空気が抜けていく。 「……いいよ。女遊び、やめてやるよ」 のっそり顔を上げた聖司は、無表情に俺を見据える。 その投げやりな言い方も、感情のない声も気味が悪くて、思わず足を引いたら、簡単に壁に当たった。
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