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いそいそと鞄から弁当を出し、遠くに聞こえる騒がしさを余所にその包みに手を掛ける。
「りょーすけくんっ」
それと同時に、静かだった空間をうるさい声が裂いた。神出鬼没なその声の持ち主に、思わず深いため息が漏れる。
「珍しいな、ここに来るの。何、彼女に振られでもした?」
「ぶっぶー、ハズレ。まだラブラブですけど何か?」
右腕にコンビニの袋、左腕に謎の大きな紙袋を提げ、両腕で大きなバツを作る男。
伊波 哉太、無駄に高いテンションを常に振り撒く、一応俺の友人。
高校2年の時、人付き合いの苦手な俺に何故か付き纏い、結果として友人枠を手にした唯一の奴で、この場所の共有者でもある。
わざとらしい拗ねたような哉太の表情に息を吐き、弁当に掛けた手を動かす。紺色の包みが、はらりと芝生に落ちた。
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