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探るようにじっと聖司を見つめてみたけど、もちろんそんなことで答えが分かるはずもなくて。
深く息を吐いて、視線をまた、もとに戻す。
「知らない、そんなこと覚えてない。それより、さっさとしろよ」
そっぽを向いたままでも、聖司が息を呑んだのが分かる。
ゆっくり動く気配と、それに合わせて擦れるシーツの音に目を閉じた。
バクバク早鐘を打つ心臓の音が、頭の中に反響する。緊張と恐怖で、今にも指が震えそうだ。
ぎゅっと手を握り込んだら、聖司の手に上から覆われて。
「力抜いてろ」
「は? ちょ、手……ひ、ぁ……!」
びっくりして緩んだ手に手が重なり、動揺してる隙に首筋を生温い空気が擽る。
思わず漏れた声を片手で押さえて、そこから広がる不快感に息を呑んだ。
さっきあいつらに会ったばかりだからか、あの時の気持ち悪さが脳裏をよぎる。
閉じた瞼の裏で、あいつらの下卑た笑顔が浮かんで。
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