第6章 嘘の真実

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「別に優しくないとは言ってない」 「優しくしてくれない、とは言ってたけどね」 いらないと首を振った俺に、哉太はケーキを口に運んでニヤリと笑う。 もしかして、それも酔った勢いで言ったんだろうか。 「酒って怖いな、涼介」 わざわざ確認するまでもなく、哉太の濃い笑顔が全てを物語っていて。この感じだと、また余計なことまで話していそうだ。 「まぁでも、根本は解決しなかったけど」 「根本って……あぁ、まぁ、そりゃあな。解決されたら困る」 残念そうな哉太に肩を竦め、そっぽを向いてカフェオレを煽る。 哉太の言う根本とはつまり、俺が聖司のことが好きだと認めなかったってことで。 酔っていても、そこだけは譲れなかったんだろうな。 「困る、ねぇ……。そんなことばっかり言ってると、誰かに奪られんじゃない?」 呆れたように息を吐き、哉太は一瞬だけカウンター席の方へ視線を移す。そっちに何があるのかなんて、見なくたって分かる。
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