7人が本棚に入れています
本棚に追加
「別に。奪られるも何も、最初から俺のものじゃないし」
恋人とか夫婦とか、誰かのものだっていう明確な関係は、俺たちの間には存在しないわけで。今更聖司の隣に誰が並ぼうが、俺にはどうしようも出来ないことだろ。
何てことない顔でカップに口を付けながら、胸の中でそう独りごちる。
「それはそうなんだけどさぁ……」
音を立てないようにか、ゆっくりとフォークを皿へ置いた哉太は、ため息で紅茶を揺らした。
心配を、してくれているのかもしれないけれど。
「哉太の望むようなことをしたところで、絶対なんて言えないし。それならこのままで、俺は充分だ」
ただでさえぎこちない関係に、わざわざ自分から新しい亀裂を入れることなんてしたくない。今のまま、互いの存在など気にもしていない顔で、同じ場所に立っていられるだけで充分だ、なんて。
「……綺麗事、言ってる自覚は?」
最初のコメントを投稿しよう!