第6章 嘘の真実

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「別に。奪られるも何も、最初から俺のものじゃないし」 恋人とか夫婦とか、誰かのものだっていう明確な関係は、俺たちの間には存在しないわけで。今更聖司の隣に誰が並ぼうが、俺にはどうしようも出来ないことだろ。 何てことない顔でカップに口を付けながら、胸の中でそう独りごちる。 「それはそうなんだけどさぁ……」 音を立てないようにか、ゆっくりとフォークを皿へ置いた哉太は、ため息で紅茶を揺らした。 心配を、してくれているのかもしれないけれど。 「哉太の望むようなことをしたところで、絶対なんて言えないし。それならこのままで、俺は充分だ」 ただでさえぎこちない関係に、わざわざ自分から新しい亀裂を入れることなんてしたくない。今のまま、互いの存在など気にもしていない顔で、同じ場所に立っていられるだけで充分だ、なんて。 「……綺麗事、言ってる自覚は?」
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