第6章 嘘の真実

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呆れを通り越して、軽蔑の見え隠れするような顔をした哉太は、怒ったように指先でテーブルを叩く。 綺麗事だなんてそんなこと、俺が1番、よく分かってる。 「……うるさい。食べ終わったなら出るぞ、この後買い物したいし」 ふいっと顔を逸らして財布を取り出した俺に、わざとらしく息を吐いた哉太は、そのくせ目を輝かせて。 「今日の夕飯、なんなの? 俺はシチュー食べたいんだけど」 なんて、ちゃっかりリクエストまでしてきた。 仮にシチューだったとしても、その席に着くつもりなんてないくせに。 「残念だったな、今日はグラタン」 「うぁー、そっちも食べたい!!」 くるりとマフラーを巻きながら答えた俺に、哉太は悩むなぁ、なんて眉を寄せる。 「どうせ食べになんて来ないくせに」 「なぁに? 食べに行って欲しいの?」 「言ってろ」 マフラーを口元まで引き上げてニヤリと笑った哉太に、呆れたと肩を竦める。
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