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くくっと喉を鳴らした哉太は、入り口の右手に置かれたレジスペースの狭さに、ご馳走様と先に外へ出た。
「……ご馳走様」
いつの間にかレジまで来ていた聖司に小さく呟き、伝票をキャッシュトレイに置く。
女性客の高い声で溢れる店内で、ここだけが切り離されているかのように静かだ。
「ケーキセットが1点とカフェオレが1点で、合計」
「わ、あ、ごめんなさい」
突然ガランと鳴ったベルの音と、ひやりと吹き込んだ冷たい風。
赤いマフラーを揺らしながら入ってきた女性は、危うくぶつかりかけた俺に小さく頭を下げた。
「や、こちらこそ、すいません」
「いいえ、ありがとうございました」
ふわりと笑んだ彼女が、あっという間に側をすり抜ける。途端、覚えのある甘い香りが鼻先を擽って。
「……オーナーの奥さんで、立石 碧さん」
「へ? オーナーの……?」
ぼんやりと彼女の背中を見つめていた俺に、聖司は感情の読めない声で答える。
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