第6章 嘘の真実

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俺が哉太の家で盛大に酔い潰れてから、数日。 何故か哉太と上手く都合が合わず、今日まで会えなかったんだけど。ようやく言えたあの時の詫びと礼に、哉太は満面の笑みを見せて。 『学校の近所に、美味いケーキが食える店があるんだけどさぁ』 なんて強請られたら、迷惑かけた手前、断るわけにもいかず。俺の奢りということで、その喫茶店に着いたのがたった今。 ガランと重たいベルの音を鳴らしながら、アンティーク調の扉を押し開ける。冬の冷たい空気に晒されていた頬に、店内の温かい空気が触れた。 「いらっしゃいませ……」 小さな靴音に重なる、無愛想な低い声。 物珍しさに泳がせていた視線が、出迎えてくれた店員へと移る。ぱちりと重なった視線に、相手の目が丸く見開かれた。
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