第6章 嘘の真実

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「……なんで……」 多分、俺の目も丸くなってる。 だって真っ白なシャツに黒のパンツ姿で出迎えてくれた店員が、どうしてか聖司だったんだから。 「店、変えようか?」 予想もしていない出来事に立ち尽くす俺の隣で、哉太が小さくそう呟く。驚いて真っ白になった頭には、その提案はとても魅力的だったけど。 「……いいよ、別に。ここのケーキが食べたかったんだろ」 なんて哉太を理由にして、さっさと空いていた席に腰を下ろす。 小さく息を吐いた聖司は、来た時と同じように靴音を鳴らして、俺たちから遠ざかっていく。 「……本当に、良かったのか」 心配そうな哉太の声に、視線は聖司を追っていたことに気付いて。 「別に? 今のあいつは店員で、俺たちは客だろ。気にすることなんかない」 取り繕うように頬杖をついて、哉太にメニューを手渡す。
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