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「接客業なんだし、香水の匂いが移ることくらいあるだろ。喫茶店の客層って、女の人が多いし」
指し示すように視線を左右に走らせた哉太に倣えば、確かに女の人が多いようだけど。
もしそれが正解なら、聖司が否定しなかったのは不自然だ。自ら濡れ衣を着ただけでなく、女の代わりに俺を抱かせろなんて。どう考えても、おかしい。
「お待たせしました」
カツンと靴を鳴らして、聖司がケーキを哉太の前に差し出す。
ミルクと紅茶のポットに、コーヒー独特の香りを立てるカフェオレを置いた聖司は、一礼してテーブルを離れかけたんだけど。
「ねぇ、聖司くんって、ここのバイトどれくらいになるの?」
パッとその腕を取った哉太が、にっこりと笑顔を浮かべる。
「え、……あー……もうすぐ、2年だけど」
言いにくそうにしながら、聖司は一瞬俺に向けた視線を下げる。
2年って、こっちに引っ越して来てすぐってことじゃないか。
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