第6章 嘘の真実

8/31

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「2年かぁ、どうりで慣れてるわけだ。つい気になっちゃって。仕事の邪魔してごめんねー」 「や、別に……。ごゆっくりどうぞ」 さっと頭を下げた聖司は、まるで逃げるみたいにそそくさとこの場を後にして。 「2年だってよ、涼介?」 カップに紅茶を注ぐ哉太は、どこか面白そうに口元を緩める。 わざわざ言われなくても、ちゃんと聞いてたっつの。 「多分、こっちに引っ越して来てすぐ、ここでバイト始めたんだろうな」 「にしても、なんで涼介に言わなかったんだろうね? 言えない事情でもあったとか?」 店名の入った紙ナプキンの上に置かれた、銀色のフォークを手に哉太が首を捻る。 形が崩れないようにか、ゆっくりとケーキに刺さるそれを見ながら、ふわふわ湯気を立てるカフェオレに口を付けた。 「どんな事情だよ、それ。て言うか、お前ら会ったことあったっけ? なんかやけに仲良さげだけど」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加