第8章 特別な甘さと求めた温もり【*】

2/28
前へ
/28ページ
次へ
帰宅してすぐにシャワーを浴びて、リビングに戻ってみれば、何やら聖司が難しい顔をしていて。 なんだろうと近づくより早く、チョコレートのような甘い香りが鼻先を擽る。これは多分、ココアだ。 「……あっちで待ってろ」 邪魔だと言わんばかりに、聖司はソファーを指差して手を払う。大人しくそれに従いながら、キッチンに立つ聖司を見やった。 見てるこっちがドキドキするような手つきなのに、聖司の顔は真剣で。俺が風邪をひいた時も、あんな風に雑炊を作ってくれてたんだろうか。 「ちゃんと出来んの」 「うっせ。髪でも乾かして待ってろ」 心配半分からかい半分で掛けた言葉に、聖司は不満そうに口を尖らせて顔を逸らす。 髪なんて放っておけば乾くのにと、肩にかけていたバスタオルで適当に拭う。ちゃっかり見ていたのか、聖司のため息が聞こえた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加