第8章 特別な甘さと求めた温もり【*】

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「……ん、これな」 コトンとガラステーブルに置かれた白いマグカップには、ほわほわと湯気を立てる甘い香りのココア。 聖司がどういう意図でココアを入れてくれたのかは分からないけれど、俺は、小さい頃からココアが大好きだった。嫌いな牛乳が飲めるからっていうのもあるけど、甘くて優しくて、安心するから。 甘いものを摂らなくなった今でも、これだけは特別だ。 中身より低い温度のマグカップに手を添えて、そっと口を付ける。口内に広がるうんざりするくらいの甘さと、鼻の奥に残るようなチョコレートの香り。 「……あっまい……」 胸焼けしそうなほどの甘さに、それでも頬が緩むのは、きっとこれが特別だから。 風邪の時と同じ、聖司がくれる特別な優しさは、擽ったくてそわそわする。胸の裏側がムズムズするような、そんな感覚。 「……落ち着かねーなぁ……」
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