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「何が?」
突然真後ろから聞こえた聖司の声に、カップを握る指先がぴくっと跳ねる。
背凭れに預けたばかりの体を起こして、そろりと振り返れば、聖司はドライヤーを手に首を捻っていて。
まさか聖司のことで落ち着かないなんて、言えないし。ていうか、その手のドライヤーは。
「や、別に。それよりそれ……」
「お前があんまり乾かさないから。ほら、前向け」
「え、ちょ、待って。カップ置くから」
くんっと肩を引かれれば、体はまたソファーの背凭れへと戻る。ゆらりと跳ねたココアが怖くて、慌ててカップをテーブルに戻した。
カチッとスイッチの入る音に次いで、温風が首筋から髪へと上がってくる。目の前のテレビに映る聖司の顔が真剣で、無性に恥ずかしくなった。
「……なんか今日、やけに甘やかしてくれんのな」
壊れ物でも扱うみたいな指先が擽ったい。
ちらりと視線を上げた聖司と、テレビ越しに目が合った。
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