第9章 甘え甘やかし、双子の姿

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その時目が覚めたのは、きっと偶然だった。 なんとなく名前を呼ばれたような気がして、ぼんやりと目を開ける。だけど視界に入るのは、真っ白な壁だけで。 気のせいだったかともう1度目を閉じたら、何かが胸に擦り寄ってきた。恐る恐るなそれは、まるで俺を起こさないようにとしているように思えて。 なんだろう、なんて思う間もなく、一気に覚めた頭が昨日のことを鮮明に蘇らせた。 そうだ俺、昨日は涼介と。 腕の中にある確かな存在に、今になって緊張を感じた。ずっと焦がれていた相手が、ここにいるんだ、なんて。 ドッ、ドッ、と強く脈打つ心臓を宥めるように、深く息を吸う。 「……、きだ」 そんな時、不意に聞こえたのは、か細くて、今にも消えそうなくらいに小さな声で。だけどそれがどんな言葉かなんて、この距離で聞こえないわけがない。
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