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六月十六日の おばあちゃん
「おばあちゃん・こんにちは」
玄関からでなく・玄関から右に入っちゃって庭から・縁側に座って待つ
6月・梅雨が明けた午後・空気はきれいだけど少し冷たい
今日は中間テストで午前中までで・家に帰っても誰も居ないから直接来てしまった
「あら亜美ちゃん いらっしゃいね・お母さんから連絡あったわよ」
「うん・おばあちゃんに会いたかった」
「航太は お昼帰ってこないのかしら」
おばあちゃんは水羊羹と日本茶を出してくれた
「今日は深蒸しの煎茶よ」
おばあちゃんは・季節に合う和菓子とその和菓子と天気に合わせた日本茶を選んでご馳走してくれる
「お昼食べていくわよね・ちらし寿しなんだけど」
「ありがとうございます・ごちそうになります」
おばあちゃんの手際はよい
飯台全体に寿し酢をまんべんなく混ぜ込んで広げる・風を送って蒸気を飛ばし 上下を返して軽くほぐす
器に盛って・錦糸卵 えび しいたけの甘煮 塩ゆでのえんどうを散らし 刻みのりと生姜の甘酢漬け を添える
「ねえ・おばあちゃん」
「こんなに美味しいのに・とうしてコウタ・・くんのお弁当・作らないんですか?」
「作ってもいいんだけどね」
「航太が ”友達と食べたいし・お昼ぐらいは自由にさせてくれ” って云ってね」
「カノジョに作ってもらえてる男子は・嬉しそうに食べてますけどね」
「男の子も・お年頃なのね」
玄関の開く音がする/ コウタロウだ
「ただいま」
「お帰りなさい・お昼はどうします」
「トモダチと食べたから・いい」
でも・おばあちゃんの味より コンビニ食っていうのは
コウタロウの味覚嗜好は・ガキだなと思う
「ねえ・航ちゃん?」
「亜美ちゃんがお弁当つくりの練習してて・航ちゃんに味見して欲しいって云ってるんだけど・だめかしら」
おばあちゃん!!何を云い出すの/ って声にならない
コウタロウと目が合う/ 何だ この心臓の音は
「別に・いいけど」
コウタロウは二階に上がっていく
「かまわないって/ じゃあ・ときどき作ってあげてくれる? 亜美ちゃん」
おばあちゃんは少し微笑んで云う
「・・はい・」
お弁当を作る前の日には・コウタロウにメールをする
相手にも都合はある/ でも断られたことはまだない
朝・教室の机の上にそっと置いておく
おかずの選択や味にはまだまだドリョクが必要だ/ 友達の中で食べてくれてるトコロは・フツウに嬉しい
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