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2 今、話そう
「ちぃいん、ちんちんちん」
リンの音に時計を見る。夜9時。
「電話タイム!」
スマホの“よく使う番号自宅ボタン”を押す。
「お母さん、うん、荷物着いたよ。
お菓子はアパートの人に配った。
ありがとう。それから・・・」
毎週木曜日夜9時、隣の部屋の舞ちゃんが塾から帰ってきて、お母さんの御仏壇に「ただいま」のリンを鳴らす。それが聞こえると、私は東京の実家に電話をする。
「最近よく電話をくれるのね、ふふ
前は愛想ないLINEばかりだったのに」
母が不思議がる。自分でも不思議・・・。
舞ちゃんが越してきた日から聞こえる『舞ちゃんとお母さんのトーク』。初めはリンを適当に鳴らしてるんだなんて苦笑してたけど、毎日聞いてるうちに気が付いた、あれは二人の会話なんだと・・・。
テストの結果が良かったのかな?で
『ちちちん!ちちん!』
学校で嫌なことがあったのかな?で
『ちぃ~ぃん・・・』とか、ちゃんと聞こえる。
両親がいて学費も下宿代も生活費も出して貰ってることが当たり前に思って感謝すらしていない自分に気付かされた音。それからいつでも聞けると思ってる家族の声は”当たり前“でなく“有り難い“ってことを教えられた音。
「ち~ん、ちぃいん、ちぃ~~ん」
今、お互いを語り合わなきゃいけないんだね。
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