透明少女メヌがいた夏

一日目

今回のことを言い出したのは、お母さんでした。

「リクは疲れているのよ。いわゆるスランプってやつ。息抜きすれば元に戻るって」

七月の模試の結果が散々で、挽回しようと意気込むものの、夏休みに入って夏期講習が始まっても勉強に身が入りません。そんなリクを気遣い、夏期講習前期と後期の間、ちょうど八月のお盆の時期に三泊四日の小旅行を計画してくれたのでした。

行先は、田舎のおばあちゃんの家。お母さんが連絡すると、ひとりで暮らすおばあちゃんはとても喜んでくれたそうです。そして「せっかくリフレッシュするなら、リクひとりで泊まらせてはどうか」という話になりました。

お母さんがお父さんに相談すると、お父さんは「それで良いんじゃないか」と一言だけつぶやきました。怒っているようでもありましたし、呆れているようでもありましたが、そのどちらでもなかったかもしれません。

とにかく、そういうわけで今日から四日間、リクはお父さんとお母さんと離れ、おばあちゃんの家で過ごすことになりました。