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「あとさ、なんで“本部長”って呼ぶんだよ。昔みたいに“絢人”でいいよ」
心外な。昔だって呼び捨てにはしていない。
きちんと“絢人さん”と呼んでいた。
「駄目ですよ。もう雲の上の人みたいなものなんですから」
私がそう言うと、本部長の眉がピクリと動いた。
彼はビールを置き、テーブルに肘をついてそこに顎を乗せると、長い睫毛を少し伏せて私を捕らえた。
「どうして。何も変わらないだろ。こうしてふたりで飲んでる」
「立場が全然違います!今日だって、本部長に呼ばれたら断れるわけないじゃないですか」
この言い方は私も良くなかった。別に彼と飲みたくないわけじゃない。私だって、話したいことはたくさんあったわけだし。
でも、ただ心の準備ができていなかったから、こうして失礼なことばかり言ってしまうのだ。
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