思い出のカケラたち

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出口の横にはまさにナイスタイミングで黒いスポーツカーが停まっていた。 「お帰りなさいませ、志岐本部長」 助手席側の窓が下がっていき、奥には眼鏡を光らせた樫木さんの偏屈な顔が現れる。 絢人さんはその窓めがけて、引き出物の紙袋をひとつ投げこんだ。樫木さんが驚いてハンドルに伏せると、袋は綺麗に手前の助手席に着地する。 「何するんです志岐本部長! 危ないですよ!」 「悪いな樫木。それ持って先に帰れ」 「なっ……!? なんですって!? この僕がせっかくお迎えに来たというのに! 尊敬する志岐本部長のお帰りを今か今かとお待ち申し上げてっ……」 樫木さんが助手席まで身を乗り出して抗議すると、絢人さんはその顔めがけて、私が持っていたふたつ目の袋も奪い取って投げ込んだ。 「ひゃー!」と叫び声を上げながら樫木さんがまたもやそれを避け、今度もうまく助手席に着地した。 「それもよろしく」 「志岐本部長ー! あなたという人はー!」 追いかけてきた先輩たちの集団はそのスポーツカーに引っかかって足止めをくらう。 身軽になった私の腰を持ち上げて、絢人さんは彼らに「じゃーな!」と手を振ってお城から走り去っていった。
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