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爽やかな風が吹き抜けていき、私たちの髪を揺らしていった。私を見据えて離さない絢人さんの瞳は、今も私だけを映している。
彼を幸せにできるのは私なのかもしれない、そう思わせてくれる瞳だった。
絢人さんに手を伸ばし、背伸びをして抱きしめた。
「ま、真夏……」
彼が小さく戸惑いを呟いたのが聞こえた。今まで一度もきちんと私から彼を抱きしめたことがなかった。
絢人さんが好き。本当はずっとこうしてみたかったのに、勇気が出なかったのだ。
「……絢人さん……」
念願叶った私が悩ましく名前を呼ぶと、体の隙間を埋めるように抱きしめ返される。「真夏…」と同じように呟く絢人さんは、私の首もとに頭を落とした。
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