62人が本棚に入れています
本棚に追加
どれだけ経ったかわからない間キスを交わして、そしてようやく唇が離れても、まだ足りないと思った。
どれだけ一緒にいても、どれだけ奪っても、鈴音が足りない。
それは鈴音も同じだったようで、
「春さん、……もっと、もっとしてください」
息を乱して頬を染めながら春一を求める鈴音は、クラクラするほど色っぽい。
「鈴音、いいけど……」
そう言いながら春一はキスをしない。
何も言わず、ただ、この事態を味わうように鈴音を見つめるだけだ。
鈴音は恥ずかしさに耐えきれないと、頭突きするように春一の胸に顔を埋めてくる。
「春さんはズルいです」
「ズルいって何が」
「だって――」
胸にすがりついたまま一気に顔だけあげて、全身で春一にしがみついてくる鈴音の目は、涙に滲んでいる。
唇から漏れるのは、
「はぁ……」
あえぎにも似たため息。
「私ばっかり春さんを欲しがってる」
「鈴音……」
「春さんにキスをお預けされてから、私ずっとずっと春さんを欲しがってます」
最初のコメントを投稿しよう!